Functgraph

機能生成可能な3Dプリンタ研究

Functgraphのプロジェクト画像

スタティックな物質生成としての3Dプリンタから、家電のような機能まで生成できる3Dプリンタを研究しています。

スタティックな物質生成としての3Dプリンタから、家電のような機能まで生成できる3Dプリンタを研究しています。

Functgraphの応用と機能生成の研究

黒木優人

本研究ではFunctgraphを応用して、食べれるサンドイッチを作るアプリ、服をたたむアプリ、ウサギのフィギュアを梱包・量産するアプリ、車のおもちゃを作るアプリの4つのアプリを試作し、Functgraphについて理解を深めました。各アプリを試作した理由として以下にそれぞれ述べます。

サンドイッチのアプリについてですが、レシピを見る術は多くありますが、結局は人間が作らなくてはなりません。「OK Google、明日の朝食はサンドイッチね」と言って朝起きた頃に料理ができてたらどんなに楽だろうかという考えから試作しました。正確に再現することもできるのでミスもありません。食材を用意すれば冷凍食品やインスタント食品の代わりに、できたての料理が自動で用意できてくれます。

服をたたむアプリについてですが、設計当初は洗濯から干す、たたむ、タンスに入れるという人間が絶対にやらなくてはならない部分を全てやってみたかったのですが、実現可能な範囲で服をたたむことにしました。洗濯をはじめとした、日常に発生する家事などを任せることができる可能性を示しました。

Rabbit Factoryについてですが、中央にあるウサギのフィギュアを量産して梱包するアプリです。真ん中にあるウサギのフィギュアを商品とすると、右の箱は商品がずれないようにするための内装箱、左の箱は店頭に置かれて客の目に留まる外装箱となります。これは、製造したフィギュアをそのまま梱包して出荷可能の状態にしたことを実現したものです。もしフルカラー3DプリンターでFunctgraphが実現できれば、ウサギではなくより色あざやかなフィギュアを作り、外装箱はお客の目に留まりやすいようなデザインを施すことができます。しかもそれらは完全自動で梱包済みまでの状態になります。さらに言いますと、この動画では2つ連続で梱包していることから、原理的には連続して何百何千といっぺんに作ることが可能です。これらのことから、パーソナルな3Dプリンタでも小ロット生産が可能になると考えています。

車を作るアプリを試作した理由は、突飛な話ではありますが、宇宙のような辺境の地へ3Dプリンタを送り込めばその場で必要なものを生成してくれるのではないかという考えから、では探査する車が欲しい思い、車を作るアプリを試作しました。車の形もバギーを模しています。現状では自走しませんが、より作り込めば、バッテリーを積み込む必要等あると思いますが、自走する車が作れると思います。月面探索をして車が壊れてしまったとしても、専門知識や専用の機械、人手さえない状態でも、3Dプリンタが自動で作り出すことができるかもしれません。


これらのアプリケーションの試作を通してFunctgraphの強みは「ユーザが介入せずに物理的に目的を達成できること」であると考えました。先ほども述べましたが、専門知識も専用の機械も人の手さえも必要なく、ユーザはただアプリをダウンロードして3Dプリンタ上で再生するだけで目的を達成することができるのです。我々はこれをPersonal Factory Automation (Personal Fabrication + Factory Automation)であると考えました。Functgraphによって3Dプリンタは、スマホのようにアプリをダウンロードして、実世界上で物理的な支援をしてくれるような新たなプラットフォームとしての未来が目指せます。

かつて3Dプリンタはなんでもできる魔法の機械だと流行した時もありましたが、実際のところは3次元物体を高速かつ手軽に作れるだけの機械で(それもすごいことですが)、思い描いていたものとはかけ離れていたかもしれません。
本研究によって3Dプリンタは個人の願望や目的を無人かつ自動で実現することが可能であると示しました。多くの課題はありますが、Functgraphによって3Dプリンタは真の意味で「なんでもできる機械」へ進化できるのではないか、その一歩を踏んだのではないかと考えます。

4DFF 2020にて発表(大会実行委員長賞受賞)

https://sig4dff.org/conference/2020/

論文情報

Shohei Katakura, Yuto Kuroki, Keita Watanabe. 2019. A 3D Printer Head as a Robotic Manipulator. In Proceedings of the 32nd Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST2019), pp535-548.

片倉翔平, 渡邊恵太. PrintMotion: 3Dプリンタに搭載されたアクチュエータを使用して印刷物を動かす手法の提案. 第26回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ (WISS2018).

Shohei Katakura,Keita Watanabe. PrintMotion: Actuating Printed Objects Using Actuators Equipped in a 3D Printer. In Proceedings of the 31st Annual ACM Symposium on User Interface Software and Technology Adjunct Proceedings (UIST2018). pp137-139.